八畳岩

少年の頃、実家の裏の山によく登った。

登るのに1時間くらい。頂上近くには広い一枚岩があり眼下を見渡せた。その広さが八畳くらいあったから「八畳岩」といわれていた。当時は、おにぎりをもって友達とその山に登り、お昼を八畳岩で食べるという日曜日が数え切れないくらいあった。山のふもとにひみつ基地とか作ったりして。

あの頃は、山頂から見渡す遠い世界に行けば「いっぱい素敵なことがある」と信じていた。
それから何十年。世界の裏側オーストラリにも住んだり、色んな場所にも行った。

でも、行ってみて分かったことは、行った場所に「素敵なこと」があるんじゃなく、自分次第で何かしようと純粋に思うことが「素敵なこと」を見つける原動力だったと言うこと。だとしたら山に登って夢をみること自体がすでに素敵だったんだなぁって思い返したりして。

今度、実家に帰ったら、八畳岩まで登っておにぎり食べたい。また夢を呟きながら。